インタビュー Interview

料理人として道のり
食への関心や興味は家庭環境が育んでくれたのだと思います。職人さんが多く集う家でしたので朝晩、彼らと母の料理を食べることが日常でした。美味しく、そして賑やかに食べる、それが私の食の原点です。料理の世界に足を踏み入れたのはフレンチのシェフがいるレストラン、でも最初は接客係として。しばらくすると厨房を手伝わないかと誘いがありました。厳しいシェフでしたが包丁の使い方などを手ほどきしてくれるうちに楽しくなってきて料理の世界で身を立てようと決心しました。その後、いくつかのレストランを経て、直近では銀座のハイブランドが経営するリストランテでシェフを務めていました。「最高の素材を生かす」「余計なことはしない」「料理にはインスピレーションが必要」など、一流のお客様をもてなす料理の真髄を学んだ15年でした。
新たな挑戦は船の上
前職は料理人としての力を存分に発揮できる最高の職場でしたが、レストランの業態変更という転機が訪れました。
次の道を考え始めた頃に出会ったのがRヨットのクルーズ客船プロジェクトでした。
船上での調理は、陸上とはことなるさまざまな制約が伴うものですが、新しい環境で仲間と共に挑戦を重ねる日々はとても刺激的です。
「料理は食材が大事」という前職で学んだことを大切にしながら、船が訪れる港ごとに出会う新鮮な海の幸や旬の野菜を取り入れて、ゲスト一人ひとりの心に残る、“ここでしか味わえない一皿” を届けたいと思っています。
目指すのは、日本で最高峰の洋上レストラン、海の上だからこそ生まれる特別な食体験をお届けしたいと思っています。


楽しく、そして学びがある職場へ
料理を始めたころ、先輩シェフから「この本を読んでおけ」と北大路魯山人の本を渡されました。料理の奥深さを学べということだったのでしょうね。いまも大切に手元においています。最初の飲食店でのじゃがいもの皮むきに始まり、働くこと、料理することの楽しみを多くの先輩に教えてもらいました。次は、私が後輩のみなさんに食べることや、調理することに興味と情熱を感じていただくようにする番です。クルーが楽しく、熱量高く働いていないレストランは、結局ゲストに楽しんでいただくことは出来ません。一流のクオリティを追及するには、クルー全員の情熱が大切なのです。
直近では、ポルトガルの造船所と厨房設備の打合せや、テストキッチンでのメニュー開発、日本全国の食材調査、さらにはお皿やグラスの選定をチームで議論しています。
こうした準備を進めるなかで、少しずつレストランの輪郭が見えてきました。
「美味しく、楽しく」、SEFUにしかないレストランを仲間とともに創り上げていく、その情熱が、自分の中で大きく高まっているのを感じています。
休みの日の十八番
プロの料理人は家では台所に立たないという声もありますが、私は率先して料理します。パスタ、リゾット、最近はパエリアがマイブームです。レストランのように雲丹や海鮮をふんだんにとはいきませんが、イタリア料理などは主たる食材、ブイヨン、塩、オリーブオイル、そして少しの柑橘味があれば、素晴らしい一皿に仕上げることが出来ます。それから、来る船上での日々を想定して、「心身ともに健康であること」を意識しています。とにかくストレスを溜めないことが一番でしょうか。
