インタビュー Interview


クルーの姿に憧れて、船乗りを目指す
小学6年生の頃、大阪で帆船祭りがあり来航したポルトガルのサグレス号を目にしました。船もですが、とにかく制服を着たポルトガル人乗組員がカッコよかった。いつかあんな船乗りになると心に刻みました。そのために商船大学に進み、やがて就職活動へ。最初はとにかく大きな船がいいなと考え、原油タンカーを運航する会社の乗船研修へ。研修船の船長がユニークな方で、「君、タンカーもいいけど、いろいろな船に乗ってみたほうがいいぞ、今なら引き返せる」と言葉をかけられました。悩んでいたある日、大学に行くと、まだ募集している会社があると。それが大阪に拠点を置くクルーズ客船を運航する会社でした。当時は海運の仕事と言えば貨物が主流でしたので客船やフェリーはあまり人気がなかったのかも知れません。地元の大阪からも近いのでお世話になることにしました。
30年以上、クルーズ客船一筋に
航海士からスタートして最後は船長まで、30年近くクルーズ客船一筋。新造船の立ち上げプロジェクトにも参画し、その客船で日本、そして世界を航海できたのは良い思い出です。個人的には、島の南北で景観や気候が違うニュージーランドが素晴らしかったです。海洋動物の宝庫、千島列島も感動の思い出が尽きません。
苦労というほどでもありませんが、何度も経験した世界一周クルーズでは、世界の地域ごとに船舶をとりまくルールが異なり、それを確認、調整しながらの運航には少し神経を使いました。でも、いつかの先輩船長の言葉通り、クルーズ客船は航路が自由に設定できます。その分、困難もありますが、多様な寄港地や海域を航海しながら、行く先々で小さな感動を積み上げていけます。これがクルーズ客船の仕事の醍醐味かも知れません。


船乗りとしての「夢」を叶える舞台へ
長年、客船の仕事に携わってきた身として、人生最後の仕事は恩返しにつながることがしたかったのです。具体的には、まだ知られていない魅力にあふれた瀬戸内海や東北の港や街が、客船によって活性化できたらという夢です。R YACHTが運航する小型の客船なら、その夢を具体化できるかも知れない、それが最初の動機でした。新しい会社、組織ですので、他社とのコラボレーション、例えば鉄道やエアラインと連携したクルーズなど、温めていたアイデアも具体化できるという期待感もあります。そして、R YACHTはまったく新しいクルーズスタイルを構築するという仕事です。従来でしたら、毎日異なる港を訪ねるというのがコース設定の基本ですが、新しい客船では違う切り口で舟遊びの楽しみを提案するということも試みてみたいです。瀬戸内海に船を浮かべて、ゲストには船上でゆったりと非日常を楽しんでもらうなど、これからの時代のラグジュアリーな旅のトレンドを我々の船から発信できたら最高ですね。
休みの日の過ごし方
乗馬が気になり、時間を割いています。言葉が通じない相手とコミュニケーションを取り、自分の考えを正確に馬に伝え、乗りこなせたときは凄く感動します。よく考えると操船も同じかも知れませんね。二つ目はギター。弾き語りをライブ配信してみたり、自分流で楽しんでいます。
